太鼓のこと

調子下がる=テンション下がる

調子下がる=テンション下がる
太鼓の皮が伸び、音程が低くなることを調子が下がるといいます。音程や響きを整えた楽器でも、舞台上の湿気を皮が吸うことによってこれが起こります。
先日も薪能では夜露の影響を受け、また大阪での舞台では当日の温度湿度の影響を受け調子が下がってしまいました。
それらのことは計算しながら太鼓を調整して締めますが、予想に反することもしばしばです。
打ち始めれば「仕方ない…」と割りきるようにしますが、「何とかならないか(…まぁ何ともならないのですが)」と意識が散漫になってしまうこともあります。経験とカンが調子ヅクリには必要です。

と改めて思う夏の日でした。

後見のお仕事

先日は『後見』のお役目でした。

『後見』の中で一番目につくのはシテ方の『後見』ですが囃子方にも『後見』はおり、各役の後ろにヒッソリと控えています。緊急時の代役という点は各役同じです。
太鼓の『後見』の場合、他の役と異なる点は本役の者に代わり太鼓を締め、道具(楽器)の調子(良い音)をつくる、つまりチューニングをするということです。能が始まる前は『お調べ』という本役の役者が実際にバチで打つチューニングがあるので『後見』の準備した道具を実際に打って調子(音)を確認することができます。『後見』もその時にバチで打たれた調子を確認できるので「フムフムと」安心できます。
が、問題は長い(二時間ほどの)曲の時。こういう時は後半、太鼓を演奏する少し前に『後見』によって太鼓自体を替えてしまいます。これは時間経過とともに太鼓の皮のコンディションが悪く変わってしまうためです。『後見』は曲の半ばで一旦楽屋に戻り、別に用意していた太鼓を新たに締め、再び舞台に戻り太鼓ごと交換します。この替えの太鼓は実際にバチで打ってチューニングするということができません。楽屋では指で弾いて調子をみることはできますが、実際の調子は舞台で打たれるまで、どのように仕上がっているかハッキリとはわかりません。ここが『後見』の一番の心配どころです
太鼓は一組ごとに特性が違い、打つ役者の打ち込みの強さによっても調子が変わります。それに加え本役の者の好みの調子も考えなければいけません。
『後見』は、この《調子(曲に合った良い音)をつくる》ということがほぼ全ての仕事になってくるので、自身が本役の時より緊張したりします。


…なんだか長々となりましたが、『後見』も緊張するんですよ~、というお話。ご静聴ありがとうございました

とうとう

とうとう
切れてしまいました。太鼓の「調緒(シラベオ)」です。麻製の調緒は、太鼓を締める時、調べ穴との摩擦で徐々にすり減っていずれ切れてしまいます。切れてしまうと当然新しいモノに換えるわけですが、これがほんの少し手間が。調緒は太鼓を締めている途中に切れてしまいますから、①古い調緒を太鼓から外す→②新しい調緒を太鼓に掛け直す→③太鼓を締める。という手順をとることになります。だいたい余計にかかる時間が10分ほど。この時間が本舞台の前ですと命取りになりますので、「危なくなってきたなぁ」と思うと切れる前に新しいモノに交換します。
では危なくなった調緒は?というと。稽古用の太鼓に掛けることになります。そういった太鼓を締める時は慎重に慎重に、危ない箇所に負担をかけないように締めるのですが、今回とうとう切れてしまいました。それも二箇所も…何年も耐えてくれましたから天寿を全うしたということですかね。お疲れ様でした。

これも大事

これも大事
天気の良い休日のお仕事。
すり減ったバチ皮の貼り替えです。太鼓の皮はそう簡単には破れませんが、皮の中心、バチで打つ部分に貼るバチ皮は摩耗して破れていきます。そこでバチ皮の貼り替えが必要になってきます。バチ皮が薄くなり、もう破れるというところで、交換するわけです。
今回も替える前のバチ皮は「まだ大丈夫かなぁ、まだ大丈夫かなぁ」と思いながら打っていましたが、いざ貼り替えてみると少しタイミングが遅かったですね…穴が…次回はもう少し早く替えましょう。

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